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神様がプロデュース【ファンからオタクへ】


 Perfumeがアイドルかアーティストか、というテーマが、十年一日の如く蒸し返されている今日この頃、そもそも「アイドル」という言葉の定義が、マチマチなのだから、お話がまとまるはずはありません。
 そこで僕は、「アイドルの正当な末裔としてのPerfume」を系統的に考察すべく、このシリーズを書き次いでいるのでした。 
 言わば、アイドル論における「南朝正統論」のようなものです。(危険な発言……笑)

 日本の芸能界における、アイドルの歴史とは、顧客たる「アイドルファン」が「オタク」、そして「ヲタ」へと変わって来た歴史でもあります。
 全ての商売と同じく、商品が消費者の感覚を変え、その変わりゆく消費動向に合わせて、商品が開発されて行きました。

 これまでの記事をまとめるとこうです。

 日本で初めて「アイドル」という言葉を、タレント売り出しのキャッチフレーズに使ったのは、ものの本に寄ると「坂本九」さんだそうです。「アイドルボーイ」という売り文句を、売る側から発したわけです。
 もちろんその前にも、見た目込みで異性のファンを掴む歌手、は存在しましたが、「アイドル」とは呼ばれていなかったんですね。
 その時点では「可愛さ」「親しみやすさ」みたいなニュアンスが勝っていて、疑似恋愛の対象ばかりではなく、若々しいお茶の間の人気者=アイドル、みたいな意味で使われていたと思われます。
 しかし、一方でビートルズを「四人はアイドル」といって売ってみたり、GSの女性ファンが失神してみたり、女の子がカッコいい男に夢中になる図式は、江戸時代から変わらずあるわけです。

 そこで、当然芸能事務所は、大きな商売の種を掴む訳ですね。
 これまでの歌謡界は実力第一で、レコード歌手たるもの何年も修行してのし上がってくるものでした。
 しかし、そうすると当然、平均年齢が上がる訳で、若いファンの財布をこじ開ける為には、どうもうまくありません。
 ひばり、ちえみ、佐知子、なんていう若き天才が、そうそう現れてはくれませんしね。
 そんな中、まず若い客の心を掴む「アイドル」を売り出して、実力は後から育てよう……ファンはむしろその方が親近感が湧くのではないか……そういう逆転の発想を持った人たちがいたわけですね。
 これは、ジャズメンあがりが中心にいた最大手事務所ではなく、それ以外の事務所(名前も挙げられますが、止めておきます)からの発想だったと思われます。

 つまり、ファンの疑似恋愛対象、または親近感の対象を「歌手」として売る、ということです。
 1960年代から、こういう商売が始まったのでした。

 当然、音楽を大事にする業界人からの反発は大きかったと思われます。
 おそらく、この時に「アイドル」=「歌手としてはイマイチ」という定説が広まったんではないでしょうか。何しろ、今でこそ「昭和の大歌手」扱いの坂本九が、登場時は「本格歌手」扱いをしてもらえなかったんですから。

 けれど、若いファンとはいつの世も、権威を嫌うものです。大御所から叩かれれば叩かれるほど、我らがアイドルの味方になりました。
「ジジイには、◯◯くん、◯◯ちゃんの魅力は分からないんだよ」っていうふうに。
 自分たちの世代の代弁者、でもある訳ですね。

 それこそ、アイドルの存在意義でありました。そして、逆転の発想の人たちの、狙い通りでもあったのでした。

 やがて、時代は80年代のアイドル黄金期になり、上の構図により産み出されるパワー(=金)が最も大きくなりました。
 玉石混合、猫も杓子も、アイドルとして売り出されます。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、不思議なくらいどのアイドルにも、そこそこ客が付き、アイドル業界は我が世の春を謳歌しました。

 その頃は、若い男の子がアイドルを好きになるのは普通の事でした。
 そろそろ「オタク」なる言葉は登場していましたが、一般アイドルファンと、アイドルオタクとの見えない境界線が存在しました。
 はっきり言えば、現実世界で異性と付き合えるか付き合えないかという、極めてシビアな「溝」があったのです。

 しかし、アイドル市場はやがて翳りを見せ始めます。
 具体的には「おニャン子クラブ」の解散が、アイドルとそのファンの蜜月時代を終わらせ、親衛隊やファンクラブが一般男子を取り込めなくなっていきます。

 今時、アイドルが好きなんて、ちょっと恥ずかしい。ちょっと幼稚だ。そんな空気が生まれました。
 なぜ、そんなにも冷めたのか?
 それは、「アイドル=疑似恋愛対象」という幻想を、当のアイドルたちが言葉や行動で否定したからです。
 小泉今日子が、「なんてたってアイドル」を歌い、奔放に行動し、
 松田聖子がマスコミを舞台に大恋愛し、
 おニャン子クラブのメンバーが、プロデューサーと出来てしまう。
 少年たちは、現実を直視せざるを得なくなった。
 僕に言わせれば、アイドルが疑似恋愛対象だ、とか男と付き合うなかれ、などという「思想」は、この時点で終わっています。事務所の管理をどんなに厳しくしようが、アイドルたちの性欲を抑える事が現実には不可能だ、と証明されたのですから。

 そこで、一般ファンは離脱し、幻想の世界に生きる「オタク」だけが取り残されました。
「オタク」たちには、現実での恋愛という選択肢が、あまりにも難易度が高かった為、「次のアイドル」へと向かうしか、術は無かったのでした。

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