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- 2011/02/14/Mon 10:26
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- レヴュー、レポ
まず、風船ですが、あれはおそらく「幻想」とか「イメージ」とか、「人気」、そういった「虚」の象徴なのではないでしょうか。
かつて、MIKIKOさんが言った、「ありがとうの意味が分かってから売れたのは、本当によかった」的な発言からも伺えるように、人気やブレイク、イメージなんてものは一時の幻に過ぎないのだ、ということなのだと思います。
風船がパンと割れるように。泡がパチンと弾けるように。
まずそのイメージを提示し、それから非常に挑発的な仕掛けを見せてきます。
センターのせり上がりから、3体のマネキンが、「今までPerfumeが着ていた衣装をつけて」出てきます!
なんと、ここまでの8曲分のパフォーマンスが「虚」である、と言い放っているのです。
しかも、ダメ押し的に花道の先端、3カ所から、「GISHIKI」の白い衣装をつけた何かが、風船を手にして上がってきます。あの儀式すらも「虚」なのでしょうか。
オセロで言えば、白い「GISHIKI」と「掟」に挟まれて、あいだのパフォーマンスがすべて真っ白な「虚」へとひっくり返されたようなものです。
ひやり、と、頬に刃を突きつけられたような気持ちがしました。
それからは、自分たちの映像と共に三人が現れ、映像がパチンと弾け、自分たちのデータを打ち込んでみせたり、無表情に、機械的に踊って「お人形である」ことを印象づけるパートです。
Perfumeの虚構性は増すばかりです。
影マイクは、自分たちの声です。その声に従って、より人間らしく振舞おうとします。
(ここで「ブレードランナー」のレプリカントを思い出したのは僕だけでしょうか)
・10人のかしゆか
ここでかしゆかは、バックの映像の「9人の自分」と共に、このパフォーマンスのテーマとなる振付で、長い手足を生かしたキレキレのダンスを披露します。踊るフランス人形、みたいに。
・あ~ちゃん
あ~ちゃんはセンターのせりから、僕命名の「ココロの粒子銃」を構えて、せり上がってきます。
その「ココロの粒子光線」で、花道の先にいる、幻のPerfumeたちが持つ風船を、一つづつ割っていきます。
さあ、分からなくなりました。
あの風船は「虚」の象徴。その虚を割ってみせたあ~ちゃんは、果たして虚か実か。
撃った後の自信たっぷりの微笑みが、そんな僕の戸惑いをあざ笑うかのようです。
・のっち
1234567891011のオブジェの前で、「リニアモーターガール」~「VOICE」までのポーズをとりながら歩いて行くのっち。
メジャーデビュー後のシングルをなぞって見せることで、「これまでの自分たちがすべて虚構だった」とでも言いたいのでしょうか。
・3人
3人揃って、センターステージで踊り始めます。すると、突然ストップし、はっきりと「IT」を意識した、MJ風の動きを始めます。
続いて、まるで武道館のオープニングのように、「故障」します。
機械音と共に、体を動かすPerfume。
人形=アンドロイド=マイケル・ジャクソン 虚構。
最後に、また三人で踊り始め、中央でポーズを決めて静止します。
三人はオペラハットの如き装置に隠され、同じポーズのまま衣装を早替えし、次の曲「VOICE」を歌い始める。
ここまで見てくると、「’07版掟」のような「実」の部分がないかのように思えます。
しかし、それはこうも言えるのではないでしょうか。
もう、ことさら「自分をさらけ出すパート」を作らなくてもいいのだ、と。
ちょっと不思議なのですが、あの掟用のセリフ、「アイドル、夢追人……」とかね、あれって使われてましたっけ?何度見ても分からないんですが、僕が聞き逃してるだけなのかしら。※
つまりね、結局あのパフォーマンスを演じた3人は、映像でもイメージでもない、実体を持った生身の女性だってことです。
虚を演じていたけれど、その裏には実が裏打ちされていた。彼女たちのパフォーマンスはその域に達していた。
だから、「実を演じる」と、そこがぼやけてしまうし、浮き上がってしまう。
そういう事なのではないでしょうか。
「虚」と「実」は、はっきり線引きできるものではなく、ましてや対立するものではない。
虚を演じる実、実を支える虚。
そう、「虚実皮膜の間」という、芸能の根幹に関わる思想を、はっきりと打ち出したのではないでしょうか。
皮膜?
そうだ、あの冒頭のテント、あれがその皮膜であり、虚構と現実の境を表す「結界」ではないでしょうか。
あれが袖に引きこまれた時が、夢、虚構が現実を侵食し始めますよ、という合図だったのです。
長くなりました。
しかし、ここを押さえないことには、5万人を集めた「挑発的」ショーを捉えることは、できなかったのです。
次回は普通のレビューを書きます。(笑)
※ 現場では、かしゆかとのっちの声だけ使われたとききました。ただ、中途半端だったのかどうか、DVDではカットされています。この文章はDVDのレビューですので、それに関してはスルーさせていただきます。